AGA治療薬として用いられるケトコナゾールの作用機序

ケトコナゾールは水虫・たむし・しらくもなど真菌感染症の治療に使われる合成抗真菌薬で、日本では医薬品扱いになるので薬局では購入できず、医師に処方してもらうのが一般的ですし、これを2%含んだフケ取りシャンプーや内服用の錠剤なども海外では市販されていますが、日本製の製品はないので必要ならば個人輸入するしかありません。ケトコナゾール2%シャンプーがミノキシジル2%外用薬と同等の効果があるという説が流布しているため、AGA治療薬として用いられることがあり、日本皮膚科学会の薄毛治療ガイドラインではC1(用いても良い)というレベルに分類されていますが、その作用機序および主作用・副作用とは、どのようなものでしょうか。

真菌による感染症としては白癬症やカンジダ症があり、表皮だけが侵食されると表在性真菌症、真皮や臓器にまで被害が及ぶと深在性真菌症と呼ばれますし、感染した部位によって爪水虫とかインキンタムシなどと呼び分けたりしますが、多くは白癬菌が皮膚に含まれるケラチンを養分にして増殖するため、ケラチンを主成分にする頭髪の周辺にも発生することがあります。人間の細胞膜の主成分はコレステロールですが、真菌の細胞膜の主成分はエルゴステロールといって、その合成にはさまざまな酵素の働きが関与しており、ケトコナゾールはその一部分を断ち切ることで、真菌の細胞膜の合成だけを阻害し、菌が増殖するのを妨げる効果があります。また真菌感染症を治療するだけでなく、脂漏性皮膚炎に効き目があることも特徴ですが、脂漏性皮膚炎とは偏食やストレスなどの影響で皮脂の分泌量が過剰になり、これを餌にする真菌が増殖して、皮膚がただれたり剥がれたりし、頭皮の場合にはフケが多くなる症状で、ケトコナゾールは皮脂の分泌率を低下させる作用があるため、フケ取りシャンプーとしてはもちろん、皮脂の過剰が原因となる抜け毛にも効果があると考えられます。そのほかに抗DHT作用を持つことや、糖質コルチコイドの分泌を抑制することが知られていますが、糖質コルチコイドは副腎皮質ホルモンの一種で、血糖量を増加させるとともに細胞の分裂や成長を抑制する作用があります。男性ホルモンから変化したDHTは男性型脱毛症の直接の原因となる物質であり、抗DHT作用によって皮脂腺を縮小させることは可能ですが、発毛を促すには毛根を活性化させなければならず、そのような作用はケトコナゾールにはないため、必ずしも発毛効果があるとは言えず、ミノキシジルと同等の効果があるという論文も、実は誤解あるいは曲解されていると考えられています。ただし頭皮の皮脂を減少させることや雑菌の繁殖を抑えることなどから、発毛効果とは言わないまでも脱毛予防効果はあると期待され、実際に抜け毛が抑えられたという研究結果も出ているので、他の育毛剤やサプリメントなどのAGA治療法と併用するには適した方法と言えるでしょう。

ケトコナゾールの2%クリームは水虫や皮膚炎の薬として用いられ、頭皮に使用するものではありませんが、シャンプーは個人輸入で入手できるほか、さらに濃度の高いローションや内服薬なども購入することは可能です。ただし副作用としてじんましん、皮膚の痒みや発赤、水泡や出血などが起きる場合があるほか、頭痛やめまい、消化器の不調、溶血、さらに男性の女性化といった重大な症状が出る可能性も指摘されています。個人輸入の医薬品は自己責任で使用することが基本となり、高濃度の内服薬などを素人判断で服用するのは危険が伴うため避けたほうが無難ですし、副作用の兆候が現れたらすぐに使用を中止し、早めに医師の診断を受けることが大切です。

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