頭髪が薄く地肌が見えてしまう、全体的にボリュームがなくなってきた……このような症状の原因の一つ、AGA(男性型脱毛)をどうにかして改善させたいと、医療機関や発毛クリニックなどでAGA治療に励んでいる方は、男女問わず多くなってきています。現在主流となっている治療法は、フィナステリドやミノキシジルなどの男性ホルモンの働きを抑制する物質、育毛を促進する薬剤を内服する治療法ですが、そのほかにも植毛などさまざまな補助治療法が開発され、内服治療だけでは希望する発毛効果が得られなさそうな人は、望むならばそれらの治療を受けることもできます。その中の一つである「育毛メソセラピー」と呼ばれる治療法は、インスリン様成長因子や繊維芽細胞成長因子、血管内皮成長因子といった育毛を促進する物質(成長因子複合体)や、フィナステリドやミノキシジルなどの育毛薬成分、コエンザイムQ10やヒアルロン酸、銅ペプチドなどの補助成分を様々な割合でミックスした「メソカクテル(注入する治療薬の混合物)」を頭皮に注入する治療です。
作用機序としては、まず成長因子複合体が毛根で休眠状態にある毛母細胞のはたらきを活性化させ、細胞分裂を始めて毛髪をつくるように仕向けます。そのためには、絶えず頭皮から毛根へと栄養成分が運ばれ、毛母細胞がエネルギー不足にならないようにする必要があり、血流促進作用のあるコエンザイムQ10や、水分保持に必要なヒアルロン酸、育毛剤として効果が認められているフィナステリドやミノキシジルを用いて毛母細胞の活動をバックアップします。また、脱毛を促進する酵素や化学物質の働きを阻害する銅ペプチドを用いて、育った髪を抜けにくくすることもあります。
では、メソセラピーの主作用・副作用とは、いったい何でしょうか。主作用は何と言っても、内服治療単体よりも高い発毛・育毛効果だといえます。内服治療では、薬剤が消化器で吸収されてから、一定の時間をかけて全身の血管を巡った後に頭皮に到達するため、どうしても内服時よりも効果が減ってしまい、仮に内服量を増やしても、有害な副作用を招くリスクを高めることになり、治療を受ける側も非常に危険です。その点メソセラピーは有効成分を薄めることなく直接頭皮に到達させることができるため、毛母細胞が細胞レベルで活性化しやすくなり、さらに従来の薄毛治療で第一選択となっていたたプロペシア内服が適応外となっている人(女性など)、植毛が困難な人にも行うことができる手技であるため、AGA治療の中でもカバーできる範囲が広い、有効な補助療法となりえます。
さらに育毛メソセラピーは現在、注射器ではなくレーザーや超音波を用いる「ノーニードル法」を用いて、できる限り頭皮を傷つけることがないような方法で行われているため、副作用もほとんどなく、仮に頭皮が赤くなる方や痛みが出る方、微量の出血を伴うことがあっても、担当医師に相談して「問題ない」という見立てであれば、心配せずに症状が治まるのを待つだけで良いとされています。
このように、治療を受ける側のメリットが大きいメソセラピーですが、フィナステリドやミノキシジルは男性ホルモンの働きを阻害する成分であるため、基本的に女性に対しては効果が薄く、さらに妊娠中や妊娠が疑われる女性、授乳中の女性の場合は胎児への影響が予測されるため、もし女性でこの治療を受けたい場合は、メソカクテルの成分にそのような成分(特にフィナステリド)が配合されていないかどうかに注意する必要があります。もちろんそれ以外にも、アレルギー反応や薬剤への反応性など、気を付けておかなければならないポイントはたくさんあるため、育毛メソセラピーを受けるすべての人は、施術の際にどのような有効成分が用いられているかをしっかりと確認するようにしましょう。